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妊娠・出産も安心なリウマチ治療

御高齢の方に起きる病気というイメージがありませんか?

「妊娠・出産も安心なリウマチ治療」

皆さんはリウマチと聞くと、70~80歳の御高齢の方に起きる病気というイメージがありませんか?実はリウマチを発症する方が一番多い年代は40歳台の方なんです。2番目は50歳代ですが、その次に多い3番目がなんと30歳代、さらに4番目は20歳代になるんです。

ご結婚や妊娠・出産などが多い20歳~39歳で見てみると、リウマチを発症された年代全体の3割以上(31.8%)になります。実に3人に1人のリウマチの方は、20歳~39歳の時にリウマチを発症されているんです!

妊娠・出産も安心なリウマチ治療

そんなご結婚や妊娠・出産などを控えた20歳~30歳代の方から良くご相談頂くのが、
「妊娠や出産でリウマチが悪くならないでしょうか?」
「リウマチのお薬は、赤ちゃんに影響しないでしょうか?」
「出産後の育児ができるか心配です」
などになります。以下で、一つずつご質問のお答えできればと思います。

妊娠や出産でリウマチが悪くならないでしょうか?

実は妊娠でリウマチが良くなる方が多く、半数以上の方が妊娠中にリウマチが良くなると言われています。実際に、妊娠と同時に関節の痛みや腫れが無くなり、お薬を減らしたり中には中止できる方もいらっしゃいます。これは、赤ちゃんという自分の体にもともといなかったものを免疫細胞が攻撃しないように、妊娠中はお母さんの免疫細胞が大人しくなり、そのことで関節の中で暴れていた免疫細胞も大人しくなるためと言われています。

また余談にはなりますが、リウマチがしっかり治まっている方はリウマチの治療が上手くいっていない方に比べて妊娠をしやすく、早産や低出生体重児も少ないと言われています。実際に、リウマチの治療を始めて良くなると妊娠される方をよく見ます。これは、リウマチが良くなることで赤ちゃんとお母さんをつなぐ胎盤の血流などが良くなり、しっかり赤ちゃんに栄養が届くからとも言われております。

また、妊娠中の血液検査の見方にはちょっとした注意が必要です。

妊娠中のリウマチ検査の見方

  • 炎症の数値(CRP、MMP3、血沈)はリウマチが落ち着いていても妊娠中は高くなる事があります。
  • 白血球(WBC)も感染症などが無くても妊娠中は1万程度に高くなります。
  • ヘモグロビン(Hb)が下がって妊娠中はみんな少し貧血になります。
  • クレアチニン(Cr)が妊娠中は下がります。

これらは全て妊娠中のホルモンバランスの変化や、免疫バランスが変化、出産時の出血に備えての血液量の増加によるものと考えられています。
よくご質問頂くのが①に関係した、「リウマチの痛みは良くなっているのに妊娠前に比べてCRPやMMP3などが高くなっているので、リウマチが悪くなっていないか心配」というものです。この場合には妊娠の影響で炎症の数値が上がっているだけなので、リウマチが悪くなったわけではなく、お薬を増やしたりする必要もないのでご安心くださいね!

妊娠・出産も安心なリウマチ治療

リウマチのお薬は、赤ちゃんに影響しないでしょうか?

お薬の赤ちゃんへの影響を心配されるお気持ち、よく分かります。妊娠中に使えるお薬と使えないお薬があるので、まとめてみましょう。

妊娠中も使えるお薬

  • エタネルセプト(=エンブレル)
  • シムジア
  • プレドニン(20㎎以下)
  • カロナール
  • アザルフィジン
  • タクロリムス

妊娠前・妊娠中に中止するお薬

  • メトトレキサート(=メトレート、リウマトレックス) 
  • 生物学的製剤(ヒュミラ、シンポニー、レミケード、アクテムラ、ケブザラ、オレンシア)
  • JAK阻害剤(ゼルヤンツ、オルミネント)
  • リマチル
  • ロキソニン、ボルタレン、セレコックス ※妊娠後期は禁止
  • モーラス湿布 ※妊娠後期は禁止

一番気を付ける点は、リウマチ治療の中心となるメトトレキサートが妊娠前から中止が必要となる事です。中止する時期についてはいくつか基準があり、最近は緩和される傾向にありますが、一番厳しく慎重な基準ですと「男女とも妊娠の3か月前からメトトレキサート中止」となります。ただ最近では「女性のみメトトレキサートを中止してから1月経周期は妊娠を避ける」と緩和されてきております。

その一方で、20~30台でリウマチを発症された方は、リウマチの勢いが強く手指の変形が進みやすい方が多くいらっしゃいます。また、この先もリウマチを長くお付き合い頂くなかで、少しでもリウマチが残っていると骨へのダメージが蓄積すし徐々に変形へとつながってしまいます。その為、他の年代のリウマチの方に比べて、よりしっかりした治療で完全にリウマチを抑え込む事が大切になります。

そこでメトトレキサートに代わって妊娠前後で治療の中心になるのが、プレドニンと妊娠中も使える2種類の生物学的製剤になります。

プレドニンに関しては、20mg以下では胎児への影響がないと言われています。通常リウマチで使われる5㎎程度ではまず問題ありません。

ただ、強いリウマチの場合にはプレドニンだけでは抑えきれない事があります。そこで役立つのが、妊娠中も使える生物学的製剤である「エタネルセプト(=エンブレル)」と「シムジア」になります。生物学的製剤はその種類によって、お薬の形が異なります。この形の違いによって、お母さんと赤ちゃんをつなぐ胎盤を通過する量が大きく異なります。
他の生物学的製剤に比べて、「エタネルセプト(=エンブレル)」と「シムジア」の2種類は胎盤を通過しにくい形をしており、お腹の中の赤ちゃんへの影響がまず心配ありません。この2種類の生物学的製剤のおかげで、妊娠や授乳中にもリウマチ治療をしっかりできるようになりましたので、ご安心くださいね。

他には、昔から使われているアザルフィジンという中程度の効き目があるリウマチのお薬も、妊娠中に使うことが出来ます。
また最近になって、飲み薬の中でメトトレキサートの次に効果のあるタクロリムスも妊娠中の安全性が認められて、妊娠中に使用ができるようになりました。
このように妊娠中のリウマチ治療は安全に使えるお薬がずいぶんと増えましたので、最近では治療の選択肢も多くなっているんですね。

妊娠・出産も安心なリウマチ治療

出産後の育児ができるか心配です

妊娠中はリウマチが良くなる方が多い事を説明させて頂きました。ただ出産後は、妊娠中お腹の中の赤ちゃんに悪さしないよう大人しくしていた免疫細胞が元に戻り活動的になりますので、リウマチが再び強くなり元の状態に戻ります。
また、出産後は赤ちゃんのお世話やおんぶで手指や肘・膝の関節に負担がかかるので、その面でもリウマチが強くなりやすくなります。
そのため、出産後に関節の痛みや腫れが出だしたら、妊娠中に減らしたリウマチのお薬を再開したり早期にリウマチの治療リ大切です。
妊娠中にリウマチが良くなって減らしたお薬を、出産後の関節の症状をみて早めに元に戻す事が大切です。

そこで良くいただくご質問が、「リウマチのお薬を使っていても、母乳をあげて大丈夫かしら?」という点です。これも、授乳が可能なお薬と、避けたほうが良いお薬がありますのでご紹介させて頂きます。

授乳OKのお薬

  • プレドニン(<40㎎以下)
  • エタネルセプト(エンブレル)
  • シムジア
  • タクロリムス
  • アザルフィジン
  • 鎮痛剤(ロキソニン、ボルタレンなど)、湿布

ほとんどが妊娠中に使用可能であったお薬と一緒ですが、鎮痛剤(ロキソニン、ボルタレンなど)や湿布が使えるようになった点が大きく違うところになります。

また少し話がずれますが、赤ちゃんの予防接種は早いもので2か月から始まるものがあります。予防接種には不活化ワクチンと生ワクチンというものがありますが、ここで注意が必要なのが生ワクチンです。
「お母さんが妊娠中に生物学的製剤を使われていた赤ちゃんは、生ワクチンの接種を生後6か月以降に遅らせる」ことが必要になってきます。
具体的には、BCGワクチンを生後6カ月以降に遅らせることと、希望のある方が行うロタウイルスワクチンは避けて頂く事になります。小児科の先生とも、予防接種スケジュールについて相談頂くと良いかと思います。

妊娠・出産も安心なリウマチ治療

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